クルマの行く末

エンジニア秀がクルマ業界動向や技術、スタイリング、マーケティングなどを分析とともに書いていくブログ

2016年09月

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パリモーターショーに先駆けて、LEXUSから新しいシートのコンセプトモデル「Kinetic Seat Concept」が発表されました。これは、最高にクールで格好良い!

技術的な特徴は、
乗員の腰の動きに合わせてシート座面と背面が動き、歩行やジョギングに近い人体の動きをシート上で実現する。これにより、旋回時や凹凸のある路面を走行した際、乗員頭部の動きが抑制され目線が安定し、運転しやすさや快適性が向上
するということと、それを実現するためにクモの巣パターンのネットシートの材料に「石油由来ではない環境に優しい人工合成クモ糸繊維」を採用したというところ。

人工合成クモ糸繊維と言えば、山形県のバイオベンチャー企業スパイバーが開発中の「QMONOS」がこのコンセプトシートに採用されています。

新繊維素材のQMONOSは、強度は鉄鋼の4倍、伸縮性はナイロンを上回り、耐熱性は300度を超えるそうで、トヨタと取引が多い小島プレス工業(株)がスパイバーと協業し、昨年に繊維の量産工場を竣工させています。

WIREDの記事によると、
「工業製品に用いられる素材のマーケットを考えると、1キロあたりの単価が高くても20〜30ドルにならないと大きなマーケットサイズはつくれないといわれるなかで、微生物発酵によるタンパク質の生産においてはこれまで1キロ辺り100ドルを切るのは難しいとされてきました。しかし、われわれはもう100ドルバリアを大きく突破できそうなところまで来ています」
とのこと。

新しい技術で実現される、新しいスタイリングのシート。

クモ糸だけにスパイダーマン的なデザインですが、これは家やオフィスのインテリアとしても格好良いかも。

クルマのシートとして採用されたら、大幅な軽量化が見込めそうです。技術の実用化が楽しみですね。

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皆さん、危険なクルマには当然乗りたくないと思われるでしょうが、でも逆に安全なクルマって何と聞かれても答えるのは難しいのではないでしょうか。

自分が新車を購入する時にいつも気にしている項目を3つ挙げておきますので、参考にされてはどうでしょうか。

1つめ:予防安全装備がついている

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画像引用:スバル アイサイト技術紹介ページ
まあ、これは最近各社とも採用している緊急自動ブレーキなどの装備のことで、多く宣伝されているので、皆さん知っていることでしょう。代表的なものでは、スバルのアイサイト、トヨタのToyota Safety Senseという技術です。

でも、色んなクルマを同じ基準で比較するのはカタログベースでは難しいので、国土交通省がまとめている「予防安全性能アセスメント」を見るのが参考になるかと思います。各社の性能が、同じ基準で一覧表示されているので、比較しやすいかと思います。

国土交通省 自動車アセスメントのページ http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/yobou_h27/index.html
平成27年度版 予防安全性能アセスメント PDF版(2016年3月発行)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/yobou_h27/data/pamphlet_yobou_h27.pdf

ちなみにスバルは、アイサイト搭載車は非搭載車に比べ、事故割合が全体で61%、追突事故は84%減ったと公式発表しています。それぐらい大きな効果があるんですねー。

スバル公式リリース(2016年1月26日) アイサイト搭載車の事故件数調査結果について 

2つめ:北米・ヨーロッパ向け輸出仕様がある

2つめは、北米やヨーロッパ向けの輸出仕様が、そのクルマにあることです。

なぜか?

それは、日本には存在しない衝突安全性能が北米やヨーロッパには存在し、輸出しているクルマは当然その基準に適合しているからです。逆に言えば、日本国内でだけしか売られていないクルマは、たいてい日本国内の基準だけにしか適合していません。

そして悲しいことに、日本は衝突安全基準という面では出遅れているというか、常に後追いです。

例えば、北米で2012年に始まったスモールオーバーラップ試験(下記の図参照)。何がスモールかというと、正面衝突では無く、ぶつかる対象とクルマがずれたオフセット衝突において、ぶつかるバリアが従来の40%に比べ、スモール(25%)ということです。これは深刻な自動車事故の衝突モードを再現したものです。
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するとどうなるかと言うと、40%のバリアにぶつかるように設計していたボディー骨格が、25%のバリアになってしまうと空振りしてしまって、全然衝撃吸収ができないという状態になりました。2012年にこの試験が始まると、高級車、普及車問わず「Poor」という最低ランクの評価が続出しました。

2016年の現在では、多くのクルマが対策されて「Good」評価になっています。下記は2015年式トヨタRAV4(北米仕様)の試験動画。2013年式は「Poor」評価でしたが、改良により2015年式は「Good」評価です。クルマとしての総合評価も最高ランクの「Top Safety Pick+」となっています。
そして、以前取り上げた横転時に自車がつぶれない為のルーフ強度という試験もあります。

さらに北米では今度「オブリーク衝突」(高速斜め衝突:下記の図参照)という衝突試験が2019年に導入されるということで、自動車業界は次なる基準に向けて大騒動です。90km/hという高速でぶつけることで、また新しい車両構造を採用しなければいけません。2018年頃からまたクルマのボディーが変わってくるでしょう。
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ヨーロッパではポール側突というモードがあります。スピンやスリップしたクルマの側面に電柱やガードレールがぶつかるモードで、クルマを模擬したバリアと違って、ぶつかる幅が狭いのでクルマの変形(ダメージ)が大きくなるのが特徴です。

下記はスバル・レヴォーグの試験動画。1:39ぐらいからポール側突の動画になります。ちなみにレヴォーグは2016年の基準で、クルマとして最高ランクの5つ星(★★★★★)評価を受けています。
このように、北米とヨーロッパの衝突安全基準は色々日本とは違っている(厳しくなっている)というのが実情です。

3つめ:新しいプラットフォームであること

上記に挙げた北米スモールオーバーラップ試験の自動車業界への影響は大きく、衝突安全性能を引き上げるため、世界の自動車メーカー各社はプラットフォーム(車体構造の土台)をここ数年で新しくしてきています。

古いプラットフォームを応急処置してとりあえず性能を確保しても、クルマが重くなってしまい燃費性能に悪影響がでてしまいます。そうならない為には、クルマの構造を骨格から見直す=プラットフォームを新しくするという必要が出てきたためです。

日本国内だけで売っているクルマには、古いプラットフォームでいつまでも作っているゾンビの様な商品も有りますが、それらは新しい世界レベルの衝突安全基準には対応していません。

まとめ

このように自分なりの3つの条件を挙げてみましたが、いかがだったでしょうか。

ちなみに一つ加えて言っておきたいのですが、これらに適合しないクルマは危険だと言っているわけではありません。最高レベルの安全性能を見極めるには、欲しい車の安全性能を確認するにはこういう見方があるよ、というように捉えて頂きたいと思います。

皆さんの参考になれば嬉しいですね。


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iPhoneのOS、iOSが9から10にアップデートされ、9月13日からダウンロードが可能になりました。 iMessageや地図、Apple Musicの機能アップなどなど「iOS最大の変化」がされています。対応機種はiPhone5以降なので、約4年前の機種も最新OSにアップデートできます。

(最近Teslaの話題ばかりですが)またTeslaも9月11日にクルマの制御ソフトウェア バージョン8.0を発表し、アップデートを開始しました。USAで使用中の事故が起きた「Autopilot」機能に関してのアップデートがされたようです。
 今回のアップデートにより、従来のレーダーは主要なセンサーとなるカメラと画像処理システムへの補助センサーとの位置づけであったものを、バージョン8.0では、ハードウェアはそのままで従来の6倍の物体をレーダーが認識できるように改良が施された。
 そのほかにも、オートステア機能ではドライバーがシステムの警告を無視し続けた場合、駐車するまで有効化が不可能になるなどの制御が加えられる。
出典:インプレス社Car watch 2016/09/13
こんな風に自分のクルマがソフトウェアが自動でアップデートされ、バグフィックス(不具合改善)や機能向上がされたら良いですよね。

ですが今のところ、そんな未来は来ないであろうと思います。

なぜか。

自動車メーカーはハードウェアメーカーだから

それは現在のほぼ全ての自動車メーカーは、「ハードウェア」メーカーであり「ソフトウェア」メーカーでは無いからです。

言ってしまえばApple、Teslaはソフトウェアメーカーであり、ハードウェアの開発・設計は多くが外注化されています。

逆に多くの自動車メーカーの制御ソフトウェアは、性能要件書は社内で作りますが、ソフトウェアはサプライヤーでの開発、つまり外注です。

つまりApple、Teslaのコア技術はソフトウェアだからこそ、自社で開発して、それを逐次顧客に提供できるわけです。

自動アップデートするには多すぎるラインナップ

それと昔からの自動車メーカーは製品が多すぎて、全車のアップデートは事前検証とか考えると無理でしょうね。車種、エンジン、トランスミッション、安全装備などの組み合わせを数えると数百、数千もの種類があるでしょうから。

メーカーとしては安全性能を担保できない限り顧客に提供はできないし、そもそも新製品の開発で手一杯で過去のクルマのアップデートなんて考えていない、というのが実情だと思います。

Appleは4年前までの機種なら20種類ぐらいまででしょうし、Teslaもまだ車種としては3車のみ、年次で細かい違いはあってもそう組み合わせは多くないので、事前検証も少なくて済むのだと思います。

ナビの地図データぐらい自動アップデートして欲しい

それでも、安全性能とは無関係のカーナビシステムのソフトウェア、データぐらい、自動アップデートしてほしいものです。

未だに、CD-ROMとかSDカードで物理的に更新、しかもメディアや作業代金も取るなんて、スマホになれた顧客にとっては時代錯誤も良いところ。

Volkswagenなどの欧州メーカーは、既にカーナビのソフトウェア更新は永久無料に移行してます(欧州内のみ)。それでもWindowsかMacのパソコンで、手作業ダウンロードは必要なようですが。
Navigation software updates
Discover Navigation and Discover Navigation Pro touch-screen navigation/radio systems include free lifetime navigation software updates.
The latest map updates for your navigation system will get you new roads, itineraries and the latest POIs in Europe.
出典:Volkswagen UK Web 
自宅のWi-Fiの電波で、クルマのナビも自動アップデートしてくれ!と思いませんか?
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何かと話題の電気自動車メーカーTeslaが、日本国内でもSUVタイプのModel Xを発売しました。価格は税込み895万円から。お値段は高いですが最高時速は250 km/hで、3.1秒で時速100 kmまで加速するハイパフォーマンスが売りです。

一番の特徴は上の写真のようにリヤドアが上に開くファルコンドア。一般にはガルウィングドアのほうが通じるでしょうか。

それと下の写真のような「現在生産されている自動車で最も大きな全面ガラス製パノラミック ウインドシールド」、つまりフロントウィンドウです。
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これらのガルウィングドアとフロントウィンドウですが、顧客目線で見るととても良いのですが、エンジニア目線で見ると「アメリカで良くこれを出したなー。すごいなー」と思います。

なぜなら、アメリカには他の国に無い安全性能試験があって、それがとても厳しいからです。横転(ロールオーバー)した際にクルマが自重でつぶれてしまわない様に、ルーフ強度試験というのがありそれが最低レベルで自重の2.5倍以上(Marginal:余裕有り評価。Good評価には4倍)必要だからです。

評価動画はこんな感じで、ルーフの斜め上から押しつぶすような形で力を加えていきます。
通常のクルマには、このような荷重が加わる部分にはボディーの骨格が通っていて、その荷重を分散して強度を確保しています。下の写真はボルボのSUV、XC90のボディー骨格です。赤い部分はとても強度の高い材料を使っていて、ボルボは最高レベルの安全性能を確保しています。
2014-Volvo-XC90-Safety-Cage_Body_Structure_Extrication
ですが、Tesla Model Xは上記のガルウィンドア、パノラマフロントウィンドウで、その部分の骨格が無いのです。(上記の骨格写真だと、フロントウィンドウの上、リヤドアの上に相当する骨格が無い)

さらに、通常のクルマは乗員スペースとは違うところに一番重いエンジンが載っていますが、Model Xは乗員スペースの下に一番重いバッテリーが載ってます。つまりクルマがひっくり返るとバッテリーが乗員スペースの上に来て、ボディーに載っかってくるわけです。

そんな構造的な悪条件にも関わらず、Teslaは下記のように述べてます(ホームページより)
米道路交通安全局(NHTSA)によるModel Xの衝突試験はまだ行われていませんが、テスラが行った社内試験の結果によると、Model XはSUVとして初めてすべてのカテゴリーで最高評価を獲得することになるでしょう。
うーん、どうやって安全性能を確保しているのか。謎です。

自動車業界や雑誌の分解調査レポートを待ちたいですねー。
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写真出典:Car Watch
最近、モーターショーだけでなく、家電見本市でも自動車会社が基調講演や技術展示を行うのが普通になってきてます。ラスベガスで1月に行われるCESでも、トヨタやアウディ、BMW等が自動運転関係の展示や講演を行ってます。

現在(9/2-9/7)ドイツ・ベルリンで行われている欧州の家電見本市IFAでも、DaimlerAGのディーター・ツェッチェ会長が基調講演していますが、そこで発表したことが興味深かったので紹介。引用はインプレス社Car Watchの記事からです。

車内がオフィスになる!

「これまでは一部のユーザーがDIYでPCを座席にくくりつけて仕事をしたりしていたが、これはスマートではないし警察もいい顔をしないだろう。我々は、来年に『インカーオフィス(In Car Office)』を導入する。それではMicrosoftのExchangeをサポートする」(ツッチェ会長)
2017年に発表されるメルセデスベンツの車では、仕事メールやスケジューラーで普及しているMicrosoft Exchangeとのデータのやりとりを、クルマができるようになる、とのこと。家では使ってないけど会社ではMicrosoft Outlookを使っている人は多いのではないでしょうか。

でも、クルマの運転中に仕事メール等が音声で読み上げられたりして、嬉しいでしょうかねぇ。スケジューラーにリンクして、ナビの行き先が自動設定されるとかは移動がスムーズになり良いかも。

搭載されるのは、時期的にはベンツSクラスのマイナーチェンジでしょうか。

DHLの荷物を駐車中のSmartに届けてくれる!

自宅や駐車場などに居なくても、受け取り場所を「クルマ」にしておけば、DHLが駐車しているクルマの中に荷物を届けてくれるサービスの実証実験を始めるそうです。

DHLとDaimler社がドイツ・シュツットガルト市内で行う共同プロジェクトで、GPSを使ってクルマを見つけ、安全にクルマのロックを解除して荷物入れ、ロックするというプロセスを、おそらくスマホや専用ロックで実現するのでしょうね。

自動運転で荷物を届けるという日本のロボネコヤマトとは違う発想ですが、こういうサービスが発想されるということはドイツでも荷物の受け取りには困ってるんでしょうね。欧州では路上駐車が当たり前なので、クルマに配達するのは宅配業者に取ってはやりやすいと思います。

そういえば、ロボネコヤマトは自動運転で届けるとしても、どこに宅配車を駐車するのでしょうね。。。

ベンツ同士が空き駐車場を連絡し合う!

その欧州の路上駐車ですが、やはり市の中心部だと空いてるスペースが無かったりして、うろうろ停められる場所を探すことも多いです。

そんな時に、近くで路上駐車しているベンツが「今から出るから、ここの駐車スペースが空くよ!」と、車車間通信で教えてくれるサービスを、将来に向けて開発していくそうです。

こういうの良いですね-。うろうろ探している時に限って、自分が通過した後ろで路上駐車が発進したりして、それを見て「くそー!」と思うことがよくあります。事前にどこが空くという情報は、とっても有用です。

これがメルセデスベンツブランドに搭載されれば、こういう「あるブランドだけ提供されるサービス」は顧客吸引力を持ってくると思います。

もはやクルマでなくソリューションを提供する時代

「誰もが自動車のデジタル化を主張している。しかし、それはA地点からB地点へいくようなモノではなく、トータルのソリューションとして提供されなければならない。今後ユーザーは自動車のなかでより時間を有効に使えるようになるだろう。すでに今日からもそうだし、明日はさらによくなるだろう」(同)
単なる「移動手段としてのクルマ」を売る時代は終わって、人が移動するのに最適なソリューションを提供するという時代に遷ってきています。

欧米の自動車メーカーはカーシェアや自動運転サービスを、社内で始めたりM&Aで取り込んだりしていますが、日本の自動車メーカーは出遅れているように見えます。自動運転技術の開発は積極的にやっているようですが。
 
そういう点で欧米メーカーは時代の流れに対するアクションが早いです。日本のPCや携帯電話メーカーのように時代に乗り損ねて衰退するということにならなければ良いのですが。
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