新年のご挨拶
皆様、新年明けましておめでとうございます。エンジニア秀です。今年も、クルマの行く末について、テクノロジー、マーケティング、社会・報道的な観点からいろいろ書いていきたいと思いますので、これからも変わらずお目通し頂けると幸いです。
なぜBMW M2か

なぜかというと、自動車雑誌カーグラフィックの最新号(2017年2月号)のカーグラフィック・アワード2016(以下、CG Award 16)にて1位を獲得しており、その理由について考察していたからです。
CG Awardは、その年に出た新型車の中から1番優れているクルマを、CG記者の投票で決める年間表彰企画。CGで行っている、カーオブザイヤー(COTY)みたいなものです。
COTYもそうですが、安いクルマから超高いクルマまでいろんなジャンルのクルマがあり、一つの物差しで決められないため、複数の記者の投票で順位を決めています。
今年のCG Awardの順位は、
1位 BMW M2 Coupe
2位 スバル インプレッサ
2位 Mercedes-Benz E-class
4位 Abarth 124 Spyder
5位 Porsche 718 Cayman
というところ。11位まであるので、以降が気になる方は雑誌をご覧ください。
BMW M2が選ばれた理由
その中で、BMW M2が選ばれた理由を簡潔に表現すると- BMWとしてはコンパクトなボディに、370PS/465Nmのハイパワーエンジンを搭載
- エンジン出力に見合った、スポーティーなシャシ(サスペンション)
- 自動車マニアを喜ばす、気持ちよく回る直6エンジンと、心地よいエンジン音
- ドライバーの操作にダイレクトに反応し、タイヤの状態が手に取るように分かるセッティング
選ばれた理由に感じた違和感
上記のM2が選ばれた理由を誌面で読んでる時に、自分の中に違和感を感じました。自分は昔からのクルマ好きでモータースポーツなども大学生時代からやっていたので、上記の「選ばれた理由」について想像はできますし、「BMW M2に乗ってみたい!」という気持ちも湧きます。(もちろん経済的に購入できないですが。)
でも感じたのは、上記のような表現や諸元値に、この雑誌を読んでいる人のどれぐらいが共感するのだろうか、という違和感です。
M2の試乗記の中で出てきたのは、「E30型のBMW M3と小型でハイパワー、ダイレクトな操縦性が似ている」という表現。E30型のBMW M3というのは、下記の写真の左のクルマで、1985年に発表されたクルマ。
30年前のクルマを比喩として使っている訳です。つまり、30年前のBMWを乗り回したことがある年代にしか共感できない表現、とも言えます。
軽量・小型のボディにハイパワーのエンジンを乗せたクルマというのは、時代に関係なくスポーティーで楽しいことは事実ですが、30年前のクルマを比喩に用いなくても表現できますよね。
自分が感じた違和感を、最若手のCG記者、伊藤記者(おそらく入社3~4年の女性)が、誌面の中で端的に表現していました。
M2を運転している間、(中略)心の芯から震える事は無かった。それはきっとM2にこれからの時代を開拓していくような提案を見つけられなかったから。そのコンパクトなサイズだけを見れば、「私のような若い世代に向けた”M”なのでは?」と期待したが、「直6」「ブン回るエンジン」「最高のエンジン音」「良く回るシャシー」などなど、おじさんが「分かってるねぇ」と喜ぶキーワードの羅列には少しガッカリ。
メーカー、メディア、マニアの3者よがりにならぬように
カーグラフィックは月刊で1240円と比較的高い雑誌ですし、BMW M2も価格(830万円)を見ての通り、ごく一部の人向けの高級車です。どちらもクルママニア向けと言えるジャンルの商品なので、それで良いのかもしれません。でも、私が2017年の年初に感じたことは、こういうことです。
今までの良いものが、これからの良いものとは限らない。今まで価値観のままで進んでいても、価値観の異なる世代には通用しないし、ひっくり返されるかも知れない。
メーカーもメディア(雑誌)も、今までの価値観、今までのやり方のままでは、ある日突然(クルマ市場のルールをひっくり返すような)ゲームチェンジャーにやられてしまうかもしれない。
富士通、NEC、京セラなど電電ファミリーが作っていたガラケーが、スマホに駆逐されたように。
「クルマ離れ」の理由探しではなく、ほぼ全ての人がスマホで繋がる現代に、どんなクルマがフィットしているかを、今年も考えていきたいと思います。