クルマの行く末

エンジニア秀がクルマ業界動向や技術、スタイリング、マーケティングなどを分析とともに書いていくブログ

カテゴリ: 業界動向・分析

audi-matrix-led-headlights-comparison

カメラを利用した安全装備の進化はブレーキだけじゃない

友人から面白い動画を教えてもらいました。ドイツ高級車メーカー、ベンツ、アウディ、BMWの最新ヘッドライト技術のまとめ動画です。

最新のヘッドライトのハイビームは、LED制御技術とカメラ画像認識を利用して前走車や対向車だけに光を当てずにハイビームを点灯し続けることが出来ます。マトリックスビームとか、マトリックスヘッドライト、グレアフリーハイビームと呼ばれる技術(グレアフリーとは『眩しくない』という意)。

詳細は以下の動画をご覧ください。全部見ると17分と長いですが、5:00~6:00の部分だけを見てもこの技術の内容、便利さが分かると思います。

LEDの点灯制御と画像認識の連動で実現

どうやって、前走車や対向車に光を当てないようにしているかというと、
  • ハイビームで照らす範囲を、複数のLEDで細かく分割して、個別に制御
  • カメラで前方車や対向車がいる範囲を認識し、そこを照らすLEDを消灯
  • 対向車の移動なども逐次認識して、LED点灯・消灯を連続制御
というような仕組みで実現しています。

目的はもちろん夜間走行の安全性

なぜ、こんな技術革新が進んでいるかというと、やはりハイビームが使われないことによる事故が多いから。過去にも取り上げた記事を一部引用します。
 『ハイビーム使用を…横断死亡96%が「下向き」』
歩行者が夜間に道路を横断中、車にはねられた昨年1年間の全国の死亡事故625件のうち、96%の車のライトがロービームだったことが警察庁の調査でわかった。

ドイツ高級車勢は着々と採用を拡大

このハイビーム技術は、ヨーロッパの高級車でどんどん採用が進んでいます。

AUDIの最高級車、A8ではハイビームを50分割して個別制御。点灯するパターンはその組み合わせにより、1億パターン以上にもなるとか。2016年に発売されたA4でも、ハイビームに12個のLEDを搭載し(分割パターンは少ないですが)同様の機能を搭載しています。
外部リンク:アウディ公式HP A8 マトリックスLEDヘッドライト
audi_a8
matrix_led_headlights3__large
Mercedes-Benzも2013年のSクラスあたりから同様のマトリクスビーム機能を搭載しており、当時は24個のLEDでハイビームを構成。同じハイビームユニットを、Cクラス、Eクラス、SUVのGLC等、次々にブランド内に展開してきています。

最新のEクラスでは、そのユニットを刷新。ハイビーム用LEDを84個まで増加し、さらに細かく照射範囲が分割され、対向車等の光を当てたくない対象物ぎりぎりまで照らすことが出来るようなっています。
w213_top_20160720_02
HELLA_MB_E-Klasse_Scheinwerfertechnik
HELLA_MB_E-Klasse_Matrix_HD84_LED_Modul

日本ではマツダがデミオ、CX-5などでも採用

日本では、マツダが積極的に採用しています。2014年に日本の自動車メーカーとしては初めてのLED式グレアフリーハイビームを、マイナーチェンジしたアテンザ、CX-5に搭載しています。

2014年のマツダのものは4分割とずいぶん粗い分割(下記画像)ですが、それでも機能が有ると無いではずいぶん違います。
1610281134350900
画像引用:マツダ公式HP

2016年には、マツダのボトムラインであるデミオに、最新式の11分割式のLED式グレアフリーハイビームを搭載。続いて発表されたCX-5のフルモデルチェンジにも、もちろんこの最新式が採用されました。
1610281134350270

コンパクトカーのデミオから最新の安全装備を投入するとは、マツダの言うように『コンパクトカーのクラス概念を超える安全装備』を体現していますね。

事故の防止は、まず危険の認知から

ヘッドランプの最新技術を紹介しましたが、やはり事故防止にはこのように前方を照らして、運転車が危険を認知することが欠かせません。

現在保有しているクルマにこの技術を付けることは無理ですが、ハイビームをこまめに使用して走行することは誰にでもできます。

またもっと簡素なシステムで、ハイビーム走行時に対向車が来ると自動でロービームに切り替わるオートハイビームシステムも普及が進んでいます。クルマを購入される際は、そのような機能が付いているかも気にしてみてください。

危険に遭遇した時に機能する自動ブレーキよりも、危険に遭遇しない為のヘッドライト技術のほうが、事故防止には有効だと思いますので。

20161207_01_01_s

トヨタがビジネスプランを一般から公募!

炎のマークがやる気を感じさせますね!

大企業の筆頭格であるトヨタ自動車が、外部からビジネスプランを募集するイノベーションプログラム「TOYOTA・NEXT」を開始することを発表しました

 募集をするサービスカテゴリーは下記の5つ。
1.全ての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス
2.もっと快適で楽しい移動を提供するクルマの利用促進サービス
3.オーナーのロイヤルティを高める愛車化サービス
4.トヨタの保有するデータを活用したONE to ONEサービス
5.全国のトヨタ販売店を通じて提供するディーラーサービス
トヨタが保有しているビッグデータ等を活用したサービスプランの提案ができます。

そして、このプログラムに応募できる人・企業も
ビジネス利用が見込める革新的な技術やソリューション、サービスの開発を行っている技術者や研究開発者などの個人、および大学や企業などの団体
・日本語での応対ができれば、応募者の年齢は問いません
・技術や研究開発をしている個人の方や、応募時点で法人化されていない団体・チームでも応募可能です
・企業様につきましても、ベンチャー・中小企業から大企業まで全てが応募可能です
というように、基本的に制限無し!

審査はイノベーション・インキュベーションのプロも実施!

トヨタのプログラムなので、テーマの審査はトヨタの専務役員・常務役員がするのはもちろんですが、
レイ イナモト(Inamoto & Co. 共同設立者 クリエイティブディレクター)
佐々木智也(株式会社デジタルガレージ 執行役員SVP)
という外部の方も審査に加わるとのこと。

レイ・イナモト氏はForbes誌で「世界の広告業界で最もクリエイティヴな25人」に選ばれたアイデア発想のスペシャリスト。
参考記事:未来はデザインできる : レイ・イナモトが考えるA.I.とテクノロジーの近未来
佐々木智也氏は、デジタルガレージにてTwitterの日本展開を主導した人物。デジタルガレージ傘下のスタートアップ企業の育成事業を担う株式会社Open Network Labの社長をされている、インキュベーションのプロ。

トヨタ側の役員は、友山専務はITの専門家、佐藤専務は国内販売の、村上常務は国内企画の専門家ということで、目指す姿がだいたい見えてきますね。

トヨタ側の方々は言ってみれば「自動車」という決まったカテゴリでビジネスをしてきた人たちなので、新しい風を入れて、新しいトヨタのビジネスを生み出したいという意気込みが伝わってきます。

実は自分もプラン有り

この発表を見て、実は自分もムズムズしています。
 
ビジネススクールで取り組んだ卒業研究としての事業計画書は、まさトヨタの国内販売に新しい風を入れるアイデア。ビジネスの現役プロフェッショナルである教授達の前でプレゼンもして、そこそこ良い評価も頂きました。

そのまま眠らせておくのはもったいないという思いがムズムズする反面、営業のプロに通じるアイデアか?という不安もあり。うーん、悩みどころです。

1019111

ボルボは駐車中にサービスを受けられる市場実験を実施中

最近、ボルボの話題ばかりですが、今回もボルボです(^^;

10月のパリモーターショーの発表から「Smartが宅配便受け取りボックスになるらしい!」という記事を以前書きましたが、ボルボが同じ取り組みの実証実験を既に始めているそうです。
スウェーデン第二の都市、イエーテボリ。乗用車大手ボルボ・カーの本社があるこの街で、面白い体験をした。ボルボの担当者がスマホを使ってEC(電子商取引)サイトから日用品を購入。そのままボルボ車に乗ってしばらく待っていると、配達員が我々の乗るクルマのトランクを勝手に開け、注文した荷物をそこに置いて何も言わずに立ち去ったのだ。
引用:日経ビジネス 2016/11/24
この事例は、荷物の配送業者との提携ですが、下記の記事は燃料宅配サービスと提携して、停車している間に燃料満タンにしてくれるというサービス。USAサンフランシスコで、実証実験中のようです。

この給油サービスは、宅配よりも地味だけど便利かも!注文しておけば家の駐車場に置いている間に、満タンにしてくれるとか良いですよね!
自動車メーカー、ボルボはスマホのアプリを通じたコンシェルジュサービスの提供をテスト中だ。車のオーナーが旅行中や就寝中に、燃料の配達や洗車の代行、車両のメンテナンスサービスが受けられる。(中略)ボルボはこのサービスの実現に向けて、燃料の宅配サービスを手がける企業Filldと提携した。(中略)
ボルボは現在、このコンシェルジュサービスをサンフランシスコのボルボ車オーナー300人を対象に実験中だ。今後、さらに多様なサービスの追加が予定されている。
引用:Forbes 2016/11/25

そのキーとなるのは、まさに「デジタルキー」としてのスマホ

その元になる技術は、今年2月にボルボが発表した「デジタルキー技術」。来年、2017年に車のメカニカルキーを廃止する世界初の自動車メーカーになる、とボルボが発表しています。
ボルボカーズによると、現在のキーの役割は、スマートフォンに移行。ボルボ車の顧客は、スマートフォンに専用のアプリケーションをダウンロード。スマートフォンを身に着けていれば、ブルートゥースによって接続される「デジタルキー」によって、車両のロック解除やエンジン始動が行われるという。
引用:レスポンス 2016/2/21
このデジタルキー技術って、できることを見てみると、トヨタが11月1日に発表したスマート・キー・ボックス(SKB、スマホとクルマの通信中継機)でできることと同じなんですよね。
過去記事:スマホでトヨタ車の鍵を開けられるようになる
002

トヨタ、メルセデス・ベンツ、ボルボなど、大中小色んなメーカーが同じサービスへ一斉に舵を切っています。どんなサービスが実用化されていくか、楽しみです。

でもちょっと気になるのが、スマホそのものやアプリで便利になるのは大歓迎ですが、今後スマホを無くした時や壊れた時の利便性のダメージがますます高くなりそうですね。

スマホを落としたり、盗まれたりしないような対策を個人的に考えておかないと、、、と思うのは、まだ気が早いですね。

dbfe4b3db7388b6147915baddcb5a20728d825ef
 日産がこんなニュースリリースを出しています。
日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区 社長:カルロス ゴーン)は、11月15~16日、ドイツで開催されたAutomotive Circle International主催の「Doors and Closures in Car Body Engineering 2016」で、新型「セレナ」の「ハンズフリーオートスライドドア」と「デュアルバックドア」の技術がイノベーションアワードで1位に選ばれたと発表しました。
今回7回目となる「Doors and Closures in Car Body Engineering 2016」は、自動車のドア周りの技術をベンチマークし、評価、表彰するもので、2010年より開催されています。
なんかとても素晴らしい賞を取ったことのように見えますが、自分は去年までこのようなカンファレンスを調査する仕事していたので、「なんだかなー」と思ってしまいます。

なぜか。

ヨーロッパ人はドアにこだわらない。

結論は、日本車は機能的にガラパゴス進化しているから、ヨーロッパ人からは「イノベイティブ」に見えるだけ、ということ。

でも、彼らはお金出してそういうクルマを買わない。 それは、日本・ヨーロッパのクルマの販売ランキング見ればよく分かります。

日本では販売台数ランキングのTOP10に3台近く、3列シート&スライドドアのクルマが入りますが、ヨーロッパ全体のランキングでは50位以内に3列シート、スライドドアのクルマが入ってきません。

みんな普通のスイングドアで、2列シートです。日本に輸入されるヨーロッパ車を見ても、スライドドアのクルマなんてほぼ無いですよね。ヨーロッパ人は、そういうクルマに高いお金を出す価値観を持っていないのです。

VWのトゥーランとか3列シートだよ!と言われるかもしれませんが、トゥーランは2014年でランキング70位ぐらいです。ヨーロッパでは全然メジャーじゃない。

カンファレンス自体もこじんまりしたもの。

そして、「イノベーションアワードを受賞した」カンファレンス自体も、別に歴史や権威があるものじゃなくて、その領域の専門(今回はドアの設計領域)の技術者が、各社持ち回りで発表しているスタイルのもの。

そして今のヨーロッパの自動車メーカーの関心事は、CO2規制に対応するための軽量化、軽量化、軽量化、という感じです。なので、素材をアルミやCFRP、樹脂にして軽くしたり、複数車種で共通化して安くしたりという内容が多いです。あとは高級クーペ向けに、こんな難しい設計を実用化しました、的なのですかね。

そこに日本メーカーが「ドアをもう一つ付けて便利にしました!」と言ったら、そりゃー注目されますよ。彼らは新しいアイデアについては寛容ですから。でも自分たちではやらない。 

日産のマーケティング部門は、そんな文化の違いとか、業界と顧客の情報格差を利用して、セレナのドアが世界的に凄い!というイメージを上手くつくりあげようとしているのかもしれません。まあ、事実を並べているので嘘ではないし、それもマーケティング戦略のひとつかも。

そんな裏事情が、見えてきたニュースリリースでした。


読者の皆さんからの反応は書き続ける励みになります。記事が面白かったら、是非ランキングクリック(下記バナー)や「いいね!」をお願いします!
人気ブログランキング

Tesla-Model_3-2018-1280-02

完全自動運転用センサーをTesla自腹で全車に装備

メディアでは大きくフォーカスされていないですが、10月17日にTesla社はかなり思い切った取り組みを発表しています。

10月19日以降に生産される、Model S、Model Xなどの既存モデルの全てに、将来の完全自動運転に対応するための装備(カメラやセンサー)を、Teslaのお金で付けるというものです。
10月19日(米国時間)、テスラは今後生産されるすべてのテスラ車に完全自動運転機能を持つハードウエアを搭載することを発表した。 (中略)

今回発表された(完全自動運転向けの)新型ハードウエアは何が変わったのか。まず外界の状況を認識するカメラの数が従来は1個だったのが、今回8個になった。これにより車の周囲360度、最長250メートルの範囲を認識する。12個の超音波センサーは、従来比2倍の距離までの物体を検知する。また、コンピューターの処理能力は40倍になり、1秒に12兆回の計算を行うのだという。

(記事後半、マスク氏インタビューより)今回の完全自動運転機能の場合は、約8000ドルにまで積み上がっている。一方で、旧型は3000ドルほどだった。
記事引用:東洋経済オンライン 2016/10/22
まだ収益が出ていないTesla社が、さらに収益を悪化させるような事をするのか?

ビッグデータを自ら作り、自動運転ソフトウェアを改善

自動運転で難しいのは、妨害物も少なく走行環境が限定された高速道路よりは、標識も様々で横から何が出てくるか分からない一般道の走行。

人間が運転するにしたって初めての道、初めて訪れる地域では、迷っちゃいますよね。

自動運転ソフトウェアも同じ。あらゆる道を、様々な時間帯で何度も走って、この道はどこに気をつけるなどを覚えていく必要があります。それを自動車メーカーがアメリカ全土を自ら走って検証するのは、時間的にも社員の人数的にもほぼ不可能。

なら、顧客に販売するクルマにカメラを付けてしまえ!と思ったのでしょうね。カメラ8個とスピードセンサー、加速度センサー、GPSからの情報が、常にクルマから自社に送信されてくれば、自動運転ソフトウェアを検証するためのビッグデータを作ることができます。

そして、そのビッグデータで学習させた自動運転ソフトウェアを、今度はクルマにデータ配信して、ソフトの安全性の検証もできてしまうそうです。
当座はハードウエア搭載車を「シャドーモード」の状態にして完全自動運転機能の検証を行う。シャドーモードでは、ハードウエアを動作させながらも実際に車を動かすことはしない。

実際の使用を想定しながら、ソフトウエアが正しく判断して事故を防げたか、あるいは防げなかったかというデータの収集を行う。自動運転の場合のほうがそうでない場合よりも、統計的に有意なレベルで事故率が低くなることを示せるようにする。そうすれば規制当局も懸念を払拭できるだろう。
自動運転における事故率の低下を事実に基づいて提示できれば、顧客の不安も少なくなるでしょうし、訴訟対策や保険にも活用できるのだと思います。

ちなみに、カメラ8個とGPSのデータを蓄積すれば、道路地図データも作れてしまいそうですね。

センサー費用は後から回収

そのように自動運転ソフトウェアを学習させながら改良し、いずれ正式リリースしたら自動運転のオプション価格を設定して、センサー費用を回収するのだと思います。
車を購入するときには2つのオプションがある。8つのカメラを搭載した完全自動運転と、カメラを4つに絞った「エンハンスド・オートパイロット」だ。「エンハンスド」の場合は、従来のオートパイロットにカメラが3つ加わったものというイメージだ。高速道路上の自動運転が可能で車線変更や追い越しなどができる。

やっていることはIT企業そのもの

なんか、Tesla社を見ていると、売っているものはクルマというハードウェアですが、その中で動くソフトウェアや開発して提供するサービスは、もはやIT企業そのもの。

クルマを動かすソフトウェアを自動アップデートするなど、旧来のクルマ会社とは異次元の遺伝子を持っていると言えます。

先日、トヨタがマイクロソフトと、GMがIBMと提携するなどのコネクテッド関連の動きについて書きましたが、自動運転の実用化に関してはTeslaは一足先を行っているような気がします。

これまでの自動車メーカーが、どれだけIT企業寄りのサービスに乗り出して行けるか?トヨタメルセデス・ベンツ、上記のGMは既に発表していますが、他メーカーからもまだまだ出てくるかと思います。どのようなサービス競争が展開されるか、楽しみですね。

↑このページのトップヘ