クルマの行く末

エンジニア秀がクルマ業界動向や技術、スタイリング、マーケティングなどを分析とともに書いていくブログ

カテゴリ: 業界動向・分析


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先週は、大きな動きが続けて2つありました。自動車業界の巨人が動いてますよ-。

GMがIBMのワトソン君と手を組んだ!

 まず10月26日、GMが既に商業化しているコネクテッド・コンシェルジェサービスであるOnStarの新サービスに、IBMの人工知能(A.I.)のWatsonを活用することを発表しました。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は、車載情報通信サービスで他のIT(情報技術)企業を追い抜くために、米IBMの人工知能(AI)「ワトソン」に協力を仰いだ。

 同社は26日に、ナビゲーションやエンターテインメントサービス以外にモバイルコマースサービスを提供する車載情報通信システム「オンスター」の新バージョンを発表する。「オンスター・ゴー」と呼ばれる新製品は、ユーザーの情報に基づいて米エクソンモービルをはじめとする提携先のキャンペーン情報などを提供するように設計されている。

 例えば、次の目的地に到着するまでに燃料切れになることをドライバーに教え、途中にあるエクソンモービルのガソリンスタンドへの順路を示すといったことが可能だ。IBMによると、現在は音声コマンドに対応していないが、2017年後半までに対応する予定だ。
WSJ Japan 2016/10/26 記事 

トヨタはMicrosoftと開発中のサービスプラットフォームを発表!

そして10月31日。トヨタがコネクテッドカーをベースに、新しいモビリティサービスプラットフォームの構築を発表しました
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、カーシェア等のモビリティサービスの普及を踏まえ、既存のトヨタスマートセンター、トヨタビッグデータセンター、金融・決済センターの上位に、モビリティサービスに必要とされる様々な機能を備えた、モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の構築を推進する。

 MSPFは、トヨタがこれまでライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際、開発、提供していた車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能を包括したプラットフォームであり、今後、提携する事業者は、このプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスをお客様に提供していくことが可能になる。トヨタは今後、このMSPFをカーシェアやライドシェアといったモビリティサービスのほか、テレマティクス保険など、様々なサービス事業者との連携に活用していく。

 トヨタの専務役員で「コネクティッドカンパニー」プレジデントの友山茂樹は「トヨタは、モビリティサービス・プラットフォーマーとして、あらゆる企業、サービスとオープンに連携し、より便利で安心な移動をお客様に提供すべく、新たなモビリティ社会の創造へ貢献していきたい」と述べた。
トヨタ自動車 2016/10/31 ニュースリリースより
クルマからの通信を元にしたモビリティサービスを、IT企業に持っていかせないという意気込みです。

と言いつつも、このニュースリリースには出てきていませんが、ITシステムは以前からトヨタと仲の良いマイクロソフトと共同で開発しています。トヨタは今年4月に、Toyota Connectedという会社を立ち上げ、ビッグデータを活用したサービスを開発すると表明しています。
トヨタ、マイクロソフトと合弁会社「Toyota Connected」を設立--Azureでビッグデータ活用
外部リンク:ZDnet 2016/4/5 記事 
つまり自動車メーカーとソフトウェアメーカーの巨人が手を組んでここまで来た、という感じです。

トヨタはラリーのWRCの参戦についても、マイクロソフトがテクノロジーパートナーとして参画すると発表していますね。
トヨタ自動車(株)は、フランス・パリで9月29日(木)~10月16日(日)に開催される2016年パリモーターショー*において、マイクロソフトが、2017年FIA世界 ラリー選手権(以下、WRC)におけるTOYOTA GAZOO Racingの「テクノロジー・パートナー」として参画することで基本的合意に達したと発表した。
Toyota Gazoo Racing 2016/9/29 ニュースリリースより

VWは韓国LG電子と?

残る1000万台クラブのメーカーVWですが、VWは今年7月に何故かIT企業ではなく電気機器メーカーである韓国LG電子とコネクテッドサービスP/Fを開発すると発表しています。
欧州の自動車最大手、フォルクスワーゲングループと韓国のLG電子は7月6日、次世代のコネクテッドカーのサービス基盤を、共同で研究開発することで合意した、と発表した。(中略)

フォルクスワーゲングループとLG電子の主な合意内容は、コネクテッドカーおよびスマートホームに関する技術を共同開発。外出先の車から、住宅の照明やセキュリティシステムなどを遠隔操作できるようにする。
記事引用:レスポンス 2016/7/7 記事
LG電子で、サービスプラットフォームが開発できるのか?ちょっと未知数です。家や家電とクルマが繋がっても、嬉しさはあまり無いような。。。

3大メーカーがどんなサービスを繰り出すか

そんな風に、1000万台クラブの3大メーカーは大々的に取り組んでいる、コネクテッドサービス。

どんな便利なサービスが出てくるか、2~3年後ぐらいでしょうか。楽しみに待ちたいですね。


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記事引用:CNN 

アメリカでは既に純正カーナビはオワコン

アメリカJ.Dパワー社の、新車を買って90日後の消費者を対象に行った満足度調査によると、
  • 全体の2/3の人が、クルマにカーナビが付いているのにも関わらずスマホやポータブルナビで道案内をしたことがある。
  • 全体の1/3近くの人が、2週間ほどで純正カーナビを使うことを止めてスマホ等のナビに移行した。
  • 半分以上の人が純正カーナビを触ったことすらない、と回答した。
とのこと。

アメリカでは日本よりもApple CarplayやAndroid Autoの普及が進んでいるので、スマホに慣れている人はあまり触らないカーナビよりもスマホAppのナビに頼りたくなりますよね。。。

日本でもスマホ連携が早く普及して欲しい

ですが、日本ではApple CarplayやAndroid Autoの普及が全くと言って良いほど進んでないので、イヤイヤ純正カーナビを使っている人も多いのではないでしょうか。

自分も純正カーナビは使わざるを得ないのですが、目的地入力はスマホで検索して純正カーナビに転送できるアプリ、Naviconを使ってます。

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(開発: DENSO CORPORATION)

Bluetoothで目的地を転送できますし、うまく繋がらない時もマップコードで直接入力できます。マップコード入力でも、カーナビ操作して目的地探すよりも格段に早いです。

でも、本当はスマホ対応して欲しいところです。スズキは純正カーナビでiOS、Androidともに既に対応したそうですが、他のカーメーカーも早く動いて欲しいですね。
スズキは10月17日、軽乗用車の「スペーシア」「アルト ラパン」「ハスラー」、小型乗用車の「ソリオ」「イグニス」の5車種にメーカーオプションとして設定している「全方位モニター付メモリーナビゲーション」の機能を拡充させる更新ソフトウェアの配信を開始した。(中略)
なお、Appleの「CarPlay」については、1月25日に配信を開始した更新ソフトウェア「VER.01.02.00」ですでに対応している。
記事引用:Car watch 2016/10/17 

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メルセデスベンツが、パリモーターショーでAirbnbの様なC2Cでのカーシェアリングサービスプラットフォームを開発していることを発表しました。

参照記事:Autocar UK, Mercedes-Benz develops “Airbnb for cars” 2016/9/29

メルセデスベンツEVにC2Cカーシェアサービス

Airbnbと言えば、現在世界中を席巻している宿泊サービスプラットフォーム。ホテル等の宿泊業を行っていない一般人でも、自宅の空いてる部屋などで世界中から宿泊予約を受け付けることができ、実際に宿泊サービスを提供して対価を得られるシステムです。

そのようなCustomer to Customer(C2C)のサービスプラットフォームのクルマ版を、メルセデスベンツは自車のEV向けに開発しているとのこと。

アイデアは現在、スタートアップ会社Getaroundと共同でサンフランシスコで試験中。メルセデスはまた、今年後半に発売するドイツ国内向けのプログラムを開発しているそうです。

今回発表されたメルセデスベンツのEVブランド「EQ」は2020年までにクルマを発売する計画なので、発売と同時にフルサービスを提供する計画なのではないでしょうか。

高級自動車メーカーがサービスプラットフォームに本腰

最近は自動運転が騒がれて、特にビジネス系雑誌で自動車業界の将来像分析が書かれていますが、その論調は

「自動車製造・販売(=移動手段の販売)で収益を上げるビジネスモデルは崩れて、モビリティサービス(移動サービスの提供)で収益を上げるビジネスに移行する」

というもの。平たく言うと、人が自分で運転する為のクルマは売れなくなり、自動運転のタクシーやバス等の移動サービスを利用するようになる、ということ。

クルマを趣味性抜きで「経済性と利便性のみを考えた移動手段」として考えるとそうなるであろうというは納得しますが、そうではないところがクルマの面白いところ。

と思っていたら、高級車の代表格とも言えるメルセデスベンツ(Daimler社)のディーター・ツッチェ会長兼CEOがこんな事を言っており、びっくりしました。
これは他の自動車メーカーが持っていない、共有モビリティに向けた幅広いレベルでの専門化(によるサービス)です。また、電気自動車へのより多くの顧客を得るために非常に効果的な方法です。次の大きなステップは、巨大な潜在需要のあるピア・ツー・ピア・カーシェアリングです。車は1日平均で、ほぼ23時間駐車されています。なぜ所有者が利益を得られるよう、その余分な時間を使わないのでしょうか。 
高級車ブランドでさえ「保有する価値」より「余剰時間の収益化」に取り組む時代。

本当にクルマ社会が変わっていく気がします。


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BMWの電気自動車(EV)i3が、電池の改良を受けて航続距離が長くなりました。
今回の改良では走行可能距離を大幅に延長。リチウムイオンバッテリーのエネルギー密度を高め、サイズを変えることなく33kWhの大容量を実現することで、従来モデルより70%長い390km(JC08モード)という一充電走行可能距離を達成した。647ccの発電用エンジンを備えたレンジ・エクステンダー装備車では、511kmの距離を無給油、無充電で走行可能となっている。
記事引用:WebCG 2016/09/27
 電池の性能が良くなるだけで、70%も長く走れるようになるって凄いですね。
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国産のEVである日産リーフも昨年11月にマイナーチェンジで電池性能が向上し、24kwhから30kwhに25%容量が向上しました。
今回のマイナーチェンジでは、大容量30kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載したモデルを追加。新開発の30kWh駆動用バッテリーは、高容量の新材料を使用することにより、従来のバッテリーパックサイズを維持しながら、リチウムイオンの高充填化と、バッテリー内部抵抗の減少を実現したという。それによって、室内のスペースを損なうことなく航続距離が280km(JC08モード)と大幅に向上するとともに、急速充電では24kWhバッテリーと同様に約30分で80%までの充電(バッテリー残量警告等が点灯した時点から充電量80%までの目安。充電時間は急速充電器の仕様、環境温度等により異なる)が可能となった。
記事引用:Autoblog 2015/11/10 

電池でクルマの価値が変わる

電気自動車って今までは、「航続距離が短い」が一番の棄却理由になってなかなか売れなかった訳ですが、その状況が改善されつつあります。

そして、まだまだ電池の性能向上は進んでいきそうです。2018年には、現在より30%向上しそうとのこと。
オートモーティブエナジーサプライ(AESC)は、「第7回国際二次電池展」(2016年3月2~4日、東京ビッグサイト)において、日産自動車のハイブリッド車や電気自動車「リーフ」などで採用されているリチウムイオン電池を紹介した。電気自動車用リチウムイオン電池は2018年までにエネルギー密度を現状の1.3倍以上に向上し、日産自動車向けに供給する。「単純な比較は難しいが、電気自動車の走行距離を従来の1.5~2倍に伸ばせるのではないか」(同社の説明員)としている。
 記事引用:MONOist 2016/3/7
そうなると、ガソリン車と変わらない400~500kmぐらいの航続距離は確保できそうですね。それぐらい持つなら日常で使える、という人も多いかと思います。

つまり電池の性能で、EVというクルマの価値が「買っても良いかも」に変わる訳です。そのように欠点が性能向上で補われると、エンジンとは違うモーターによる低速からの加速感とか、静粛性とかがクローズアップされるのではないでしょうか。

車内空調技術のブレークスルーがあるか

その次にEVが必要な技術革新は、エアコンやヒーター対策でしょうか。カタログ燃費測定時は空調やオーディオは全てオフなので良い燃費が出ますが、実用上は全てオンですから街乗りじゃあ絶対に航続距離は短くなります。

そのためにはいかに電気を使わずに車内を快適にするか、に各社は知恵を絞っているところだと思います。その技術はガソリン車、ディーゼル車でも役に立ちますしね(エンジン車では目立たない技術ですが)。

これらの電池が改良されたEVの実用燃費(電費)がどれぐらいなのか、エアコン等の影響が気になりますね。情報があったら取り上げたいと思います。 
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写真出典:Car Watch
最近、モーターショーだけでなく、家電見本市でも自動車会社が基調講演や技術展示を行うのが普通になってきてます。ラスベガスで1月に行われるCESでも、トヨタやアウディ、BMW等が自動運転関係の展示や講演を行ってます。

現在(9/2-9/7)ドイツ・ベルリンで行われている欧州の家電見本市IFAでも、DaimlerAGのディーター・ツェッチェ会長が基調講演していますが、そこで発表したことが興味深かったので紹介。引用はインプレス社Car Watchの記事からです。

車内がオフィスになる!

「これまでは一部のユーザーがDIYでPCを座席にくくりつけて仕事をしたりしていたが、これはスマートではないし警察もいい顔をしないだろう。我々は、来年に『インカーオフィス(In Car Office)』を導入する。それではMicrosoftのExchangeをサポートする」(ツッチェ会長)
2017年に発表されるメルセデスベンツの車では、仕事メールやスケジューラーで普及しているMicrosoft Exchangeとのデータのやりとりを、クルマができるようになる、とのこと。家では使ってないけど会社ではMicrosoft Outlookを使っている人は多いのではないでしょうか。

でも、クルマの運転中に仕事メール等が音声で読み上げられたりして、嬉しいでしょうかねぇ。スケジューラーにリンクして、ナビの行き先が自動設定されるとかは移動がスムーズになり良いかも。

搭載されるのは、時期的にはベンツSクラスのマイナーチェンジでしょうか。

DHLの荷物を駐車中のSmartに届けてくれる!

自宅や駐車場などに居なくても、受け取り場所を「クルマ」にしておけば、DHLが駐車しているクルマの中に荷物を届けてくれるサービスの実証実験を始めるそうです。

DHLとDaimler社がドイツ・シュツットガルト市内で行う共同プロジェクトで、GPSを使ってクルマを見つけ、安全にクルマのロックを解除して荷物入れ、ロックするというプロセスを、おそらくスマホや専用ロックで実現するのでしょうね。

自動運転で荷物を届けるという日本のロボネコヤマトとは違う発想ですが、こういうサービスが発想されるということはドイツでも荷物の受け取りには困ってるんでしょうね。欧州では路上駐車が当たり前なので、クルマに配達するのは宅配業者に取ってはやりやすいと思います。

そういえば、ロボネコヤマトは自動運転で届けるとしても、どこに宅配車を駐車するのでしょうね。。。

ベンツ同士が空き駐車場を連絡し合う!

その欧州の路上駐車ですが、やはり市の中心部だと空いてるスペースが無かったりして、うろうろ停められる場所を探すことも多いです。

そんな時に、近くで路上駐車しているベンツが「今から出るから、ここの駐車スペースが空くよ!」と、車車間通信で教えてくれるサービスを、将来に向けて開発していくそうです。

こういうの良いですね-。うろうろ探している時に限って、自分が通過した後ろで路上駐車が発進したりして、それを見て「くそー!」と思うことがよくあります。事前にどこが空くという情報は、とっても有用です。

これがメルセデスベンツブランドに搭載されれば、こういう「あるブランドだけ提供されるサービス」は顧客吸引力を持ってくると思います。

もはやクルマでなくソリューションを提供する時代

「誰もが自動車のデジタル化を主張している。しかし、それはA地点からB地点へいくようなモノではなく、トータルのソリューションとして提供されなければならない。今後ユーザーは自動車のなかでより時間を有効に使えるようになるだろう。すでに今日からもそうだし、明日はさらによくなるだろう」(同)
単なる「移動手段としてのクルマ」を売る時代は終わって、人が移動するのに最適なソリューションを提供するという時代に遷ってきています。

欧米の自動車メーカーはカーシェアや自動運転サービスを、社内で始めたりM&Aで取り込んだりしていますが、日本の自動車メーカーは出遅れているように見えます。自動運転技術の開発は積極的にやっているようですが。
 
そういう点で欧米メーカーは時代の流れに対するアクションが早いです。日本のPCや携帯電話メーカーのように時代に乗り損ねて衰退するということにならなければ良いのですが。
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