クルマの行く末

エンジニア秀がクルマ業界動向や技術、スタイリング、マーケティングなどを分析とともに書いていくブログ

タグ:事故

安全支援技術でペダル踏み間違い事故を抑制

前回、高齢者の 運転操作不適による事故について触れましたが、トヨタから安全支援技術
「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」で事故が減ったとの発表がありました。
トヨタ自動車、駐車場での安全支援技術
「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」の事故低減効果を発表
-駐車場での踏み間違い事故が約7割、後退時事故が約4割減少-
 
トヨタ自動車(株)は、駐車場内での衝突事故被害軽減に寄与する「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を搭載している3車種(アルファード、ヴェルファイア、プリウス)について、2015年1月から2016年6月までの18カ月の間に駐車場で発生した事故を調査した。当該車種約6万台分を契約している保険会社による約2500件の事故データを調査した結果、踏み間違い(ブレーキとアクセルの踏み間違い)事故件数は約7割減少し、 後退時事故件数については約4割減少という結果を得ることができた。
参照記事:トヨタ自動車 ニュースリリース 2016/12/26 
  ペダル踏み間違い時          後退時
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なかなかこのような事故低減効果って正確性が担保出来ないと発表するのは難しいのですが、統計的な検定を行って、90%以上の確率で有意な差があることを確認しているそうです。

距離検知センサの反応でエンジン出力とブレーキを制御

原理は難しいものでは無く、障害物が近くなるとエンジン出力を抑え、ブレーキをかけるというもの。
インテリジェントクリアランスソナーは、衝突の可能性がある障害物を感知したとき、ハイブリッドシステムの出力を抑制することにより車速の上昇を抑えます。(ハイブリッドシステム出力抑制制御:下記図1)
また、そのままアクセルぺダルを踏み続けた場合は、ブレーキをかけ減速させます。(ブレーキ制御:下記図2)
トヨタHP プリウスの商品解説より 
トヨタ作成の、解説用動画はこちら。

従来の機能+αで社会的に効果のある機能に。 

駐車時の距離検知ソナー(センサー)ってずいぶん前からある機能なのですが、それとエンジン、ブレーキ制御を結びつけることで、事故防止につながる機能になったようです。

ちなみに、前進している時の事故においては、ICSの効果は「優位な差は確認できておらず、引き続き調査を進める(トヨタ)」としてますが、前進時は走行状況は多様すぎて(駐車や渋滞、単に住宅地を低速走行している等)状況を確定できないんでしょうね。

他社も同様の機能で事故防止になっているはず。 

もちろんトヨタだけでなく、他社も同様の機能を既に搭載しています。ダイハツのスマートアシスト3は、前方はカメラによる画像認識で、後方はソナーで障害物の距離を検知しています。
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こちらは、スバル・アイサイトの後発進防止機能の紹介動画。スバルもダイハツと同じく、前方はカメラ、後方はソナーですね。


スバルは踏み間違いに限定していませんが、アイサイト搭載車は61%事故が減少すると発表していますし、他社の自動ブレーキ機能も似たような効果が出ているものと想像します。トヨタは多くのクルマからDCM通信で車両情報を取得しているので(もちろん顧客承諾の上)、分析ができているのかもしれません。

他社も含めて、このような機能が事故を減らすことがデータで立証され、事故による死者や怪我が減ることはもちろん、事故処理や渋滞、損害保険などの社会的損失に対するケアがどんどん減って、クルマが社会的にもっと使いやすくなり、負担が少なくなることを期待します。 

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高齢者のペダル踏み間違い事故に実刑判決

高齢者によるペダル踏み間違い事故についての地裁判決で、実刑判決が出ました。
昨年12月に埼玉県さいたま市浦和区内でペダル踏み間違え事故を起こし、路肩を歩いていた15歳の女子高校生を死亡させたとして、過失致死の罪に問われた81歳の男に対する判決公判が16日、さいたま地裁で開かれた。裁判所は禁錮1年6か月の実刑を命じている。

問題の事故は2015年12月23日の午後2時35分ごろ発生している。さいたま市浦和区東高砂町付近の市道(片側1車線の直線区間)を走行していた乗用車は信号待ち車列の最後部に位置していたクルマの側面に接触。回避しようと急ハンドルを切ったことで道路左側の路肩へ進入するとともに、前方を歩いていた15歳の女子高校生に衝突した。

運転していた同区内に在住する80歳(当時)の男は衝突後もブレーキと間違えてアクセルを踏み続けており、高校生はクルマと金属製ポールの間に体を挟まれて胸部などを強打したことが原因で死亡。警察は男を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害)の現行犯で逮捕し、検察は罪状を過失致死に切り替えて起訴している。
この事故については、予備知識も無いので具体的内容に触れるつもりはありません。

また、人の命を奪った交通事故を起こした運転車に対する判決として、年齢に関係なく責任に対する厳しい処遇が言い渡されるのは、法治国家として何ら不思議なものではないと思います。

運転操作不適は高齢になると増えるという事実

さて、高齢者によるペダル踏み間違え事故が大きく取り上げられていますが、本当に高齢者になると増えるのでしょうか。

下のグラフは、警察庁の「平成27年における交通事故の発生状況」(リンク)から、「ペダル踏み間違え」が含まれる「運転操作不適」の10万件当たり事故件数を、年齢別に示したものです。
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このデータを見ると、35歳から69歳までは30件前後で推移しているのに対し、70歳から高齢になるに連れて事故件数が増加していく、と言うことです。 

一方で85歳以上の起こす事故件数より、24歳以下が起こす件数が多いことも読み取れます。19歳以下はダントツに多いです。まだ、クルマの運転に慣れてない世代なので、急な走行状況変化に対応できていないのだと思います。

では事故全体に対する比率を見るとどうでしょうか。
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こちらで見ると、85歳以上が全年齢でトップ。19歳以下は、件数ではトップでしたが、比率では下がりました。

他の法令違反による事故形態を見ると、25歳以下は漫然運転脇見運転安全不確認など、注意散漫に起因する事故が多いので、相対的に運転操作不適の比率が低くなっています。

70歳以上では、それらの注意散漫な運転による事故が少ない分、相対的にペダル踏み間違いなど運転操作不適の比率が高い、と言えます。

結論:若者・高齢者も高リスクだが、自分たちも起こすかもしれない

さて、上記のニュースや、これらのデータから言える事は
  • 高齢者は運転操作不適が多いが、若者(25歳以下)も同じぐらいのリスク
  • でも、70歳ぐらいから運転操作ミスが増えるのは事実。
  • 高齢者であろうと若者であろうと、事故を起こした時の責任は変わらない
  • 30代、40代は事故は少ないが、高齢者の1/2ぐらいの確率で起こしている。
 ということでしょうか。

事実に基づいて自分の認識を正しくすることはもちろん、自分の周囲、特に親族にも同じ認識を持ってもらうこと。そして事故が起きたときの判例についても、認識してもらうことが必要かと思います。

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